【私の経験談】「院長」という立場から私が得たもの

私たち、「柔道整復師」という仕事は医療業に入ります。

そして医療業は細分化することができ、その中の「療術業」に入るそうです。

他には、按摩マッサージ師鍼灸師などが「療術業」に入ります。

柔道整復師は、どの場所でお仕事をしているかというと、

  • 整骨院
  • 接骨院
  • 整形外科
  • 介護施設
  • スポーツトレーナー

などで、その中の多くは整骨院接骨院でお仕事をされています。

では、整骨院、接骨院の院長の仕事とはどんな内容なのでしょうか?

今回のコラムでは、その「院長」について、私の経験談、体験談からお伝えできればと思います。

「院長」になりたての頃の話

私が以前所属していた接骨院グループから新規で接骨院を開業する際にご指名を頂き、「分院長」を務めさせて頂いたのは15年も前の出来事です。

当時の私は教わったばかりのテクニックを総動員して、とにかく一生懸命に治療をしていました。

来る日も来る日も患者様の対応に追われる毎日。

しかし、治療だけやっていればいいのではない、と気が付くまで時間は必要ありませんでした。

それは「決断の連続」だったからです。

受付スタッフの面接と採用、全員のシフト組み、物品の購入、物販の仕入れ、掛かってくる営業の電話対応、宣伝広告の作戦など、たくさんありました。

周りを見たら、自分より後に入社した後輩ばかり。

何かをしたくてもまだ自分で決められないので、私に聞くしかありません

日々様々な決断を繰り返していくうちに少しづつ覚えていき、たくさん勉強させて頂きました。

それから数ヶ月ほど経った頃の話

少しづつ接骨院が回り始めて軌道にのり始めたころ、ある患者様から言われました。

「院長は治療が一番上手いんでしょう。」

確かにそうあるべきだと私も思っています。

患者様の口から直接聞くと身が引き締まる思いと併せて、

  • 自分は患者様からこういう見方をされているんだ
  • どの場面でも常に自分がトップでいること

と認識した出来事でした。

後輩のスタッフからも、治療で困った時は必ず私に聞くようにしています。

そのため私も全ての治療に責任が取れるように、今も治療テクニックのレベルアップを目指しています。

「分院長」とは?「分院長」になるには?

まず、院長になるには施術管理者講習として、

  • 資格取得後の実務経験
  • 施設管理者研修を2日間受講

が義務付けられています。

ですが、施術管理者講習を受講してもすぐに独立開業をしないで、就職先の分院長として経験を積まれる方が多いようです。

ただ、その会社や組織形態によっては、規定やルールが設けられているところもあるため、それらをクリアしてはじめて分院長に昇格します。

「分院長」としての責任と役割

分院長としてまず会社や組織から求められる責任は、予算の達成です。

私たち柔道整復師は、患者様の治療をさせて頂くことで代価を頂き生計を立てています。

あまり安価に設定してしまうと、院の経営が成り立たなくなることがあります。

そのため、現在の患者様の来院数やリピート率、単価の設定などの生産性を細かく設定、把握して実行し経営を成り立たせないといけません。

どんなに優秀な技術や知識を持っていても、経営者としての側面も必要になります。

また、立場としての役割も大変重要です。

社長、幹部、院長、社員などとポジションがそれぞれ分かれていると思いますが、分院長としての役割は、経営陣が決めた営業計画を達成するための計画を立て、会社に対して結果責任を負うことです。

さらにもう1つ、役割として担って頂きたいのは、後輩の育成です。

自分自身が周りの人達の助けによって成長していることを忘れてはいけません。

先輩、上司、同期、後輩とともに切磋琢磨し、院を繁栄させなければいけません。

そのためには、後から入社してくる後輩を育てて良い人材へとともに成長して欲しいのです。

「分院長」と「独立開業」の差

柔道整復師の多くの方が、将来「独立開業」したいと言うことを耳にします。

私なりの「分院長」と「独立開業」の解釈は、

分院長

会社の経営の一部を任されその責任と役割を果たしていくのが仕事

独立開業

会社経営の全てを自分でこなし、全てに於いて責任がとれること

だと思っています。

「分院長」は会社経営の一部を任されて仕事を進めます。

例え任された院の経営が上手くいかなくなったとしても、減俸や降格となり首を切られることは少ないでしょう。

「独立開業」となると、個人事業主か法人化するかはわかりませんが、一国一城の主、わかりやすく言うと社長です。

事業が順調に進んでいれば良いのですが、独立開業したとなっては、減俸や降格だけでは済まされません。

最悪の場合、廃業とともに多くの借金が残ってしまうヒトもいます。

この最悪のケースにならないためにしっかりとした事業計画、開業資金計画を立てることからスタートし、開業後もPDCAサイクルを繰り返し常に成長を続けていきます。

「分院長」と「独立開業」の間には、責任の重さと覚悟の違いによる差があるのだと、私は思います。

あなたが考える「院長像」

私は友人や知人から、この様な話しをよく耳にします。

Aさん

B院長、自分は早く分院長になりたいです!

B院長

それは良い心構えですね。でも、どうして早く分院長になりたいのですか?

Aさん

たくさんお給料が欲しいからです!

Aさんは個人売上が取れれば、分院長、やがては院長になることが出来、お給料も上がると思っていますね。

売上を上げることは大事なことですが、これでは「院長になること」が目標になってしまいます。

治療テクニックのレベルアップ、院の経営の進め方、責任と役割の重要性が解っている上で、人柄やその行動も必要な条件です。

Aさんがこのまま分院長になってしまうと、早いうちに経営難に陥る可能性が高いと私は思います。

大事なことは、「院長になる」ことを目標にするにではなく、

自分は〇〇な院長になる。

というビジョンを持ち、いつまでになるという明確な期限を決めて行動を始めた方が良いかと思います。

院長になってからの方がすごく大事で大変なのです。

まとめ

整骨院、接骨院の院長の仕事には、「決断をする」ことから始まり、「治療テクニックの向上」「経営のノウハウを理解する」「責任と役割を理解し実行できる人」が早く繁盛していくのではないでしょうか。

そのためには「明確なビジョン」と「覚悟」が必要だと私は思います。

この大変な仕事をやりがいに変えられたら、楽しい仕事に変わると思います。


執筆者情報

院長・柔道整復師
大嶋 伸雄 先生

◆健康管理士一般指導員
◆スポーツトレーナー、フィットネスインストラクター歴5年
◆治療業界歴25年
資格取得後、大手接骨院グループにて経験を積み独立開業
現在、接骨院、整体院を併設し県内外の患者様の治療をする

公式ホームページ:
たま駅前接骨院 https://tamaekimaeseikotsuin.com/
e.r整体治療院 https://erseitai.com/

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