【私が独立したきっかけ】現役柔道整復師が当時を振り返る

私は接骨院で5年間働いたあと、10年間ほど整形外科で働き、その後開業をしました。

そのときの転職・独立のきっかけとなった思いなどが参考になればと思い、この記事を書きました。

” 柔道整復師 ” という職業との出会い

私が柔道整復師になった理由は、「何か健康に関係する仕事につきたい」という漠然とした思いから、何となく目についた ” 柔道整復師 ” を選びました。

柔道整復師の資格取得した後、「柔道整復師といえば接骨院だろう」と職場を決めました。

私自身、接骨院に通ったことがなかったので、専門学校の先生からはなんとなく聞いてはいたのですが、実際にどんなことをするのか、どんな接骨院が自分に合っているのかなどよくわからないまま、通いやすさを中心に探し、働き始めました。

初めに働いていた接骨院では、

  1. 痛いところに電気をとにかく当てる
  2. 温める
  3. 10分ほど揉みほぐす 

ということをしていました。

診断みたいなことはほとんどなく、ただひたすら揉んでいました。

毎日ひたすら揉みほぐしていたので、揉む技術は鍛えられたと思います。

痛いところを揉みほぐすだけでも症状が、まあまあ改善していたので、それなりに手応えを感じてはいました。

ただ、骨折や捻挫などの外傷は、ほとんど来ませんでしたし、クイックマッサージ感覚で来られている方も多く、だんだん物足りなさを感じ、自分の成長を促すためにも医療に携わりたいと思い、整形外科で働くことにしました。

整形外科での勤務経験と、自分の「やりたい事」を見つける

その整形外科では、電気治療のセッティング、外傷の固定、骨折・脱臼の整復、レントゲン撮影のセッティングなど様々なことを経験させてもらいました。

接骨院よりも幅広い症状の患者さんが来院されていて、骨折・脱臼を診る機会も多く、接骨院には来ないような症状(痛風やリウマチの関節炎、閉塞性動脈硬化症などの血管障害など)を診る機会もたくさんありました。

また、看護師や理学療法士など、他の医療職の方の仕事を見させてもらったことも、とてもいい経験になりました。

数年ほど整形外科で働かせてもらって、仕事が一通りできるようになっていくうちに、段々と不満を感じるようになりました。

私はのんびりしている性格なので、パッパッパっと次から次へ仕事をこなしていくのが苦手です。

そのため、次から次へと来院される患者さまを、流れ作業のようにどんどん回さないといけないというのが、だんだんと苦痛に感じるようになってきました。

また、ずっと症状が改善・解消しないにも関わらず、同じ治療をずっと受けに来てくださる患者さまの対応にやるせなさを感じ、じっくり話を聴く時間もなく、医師の指示がなければ治療法を変えることも出来ないため無力感のようなモノも感じることが増えてきました。

そうしているうちに、自然と「患者さま1人1人をじっくり見ることができる施術をしたい」という思いが強くなっていきました。

10年くらい掛かってしまいましたが、やっと「自分のやりたいこと」が見えてきた気がしました。

いざ、独立・開業!

3年後に独立すると決めて、開業に向けての準備を少しずつ始めていきました。

準備万端を目指したらいつまでたっても満足しないなと考え、3年経ったらとりあえず開業すると決心し、そして3年後に何とか開業することができました。

現在、開業をして7年ほどが経ちましたが、開業してから今までを振り返ってみると、はっきり言って、整形外科で勤めていた時の方が楽だったなと思います。

整形外科で働いていた時は、私が体調を崩して出勤できなくても有給が減っちゃうぐらいの感覚だったのですが、独立後は仕事ができないと、その間は収入がなくなります。

コロナに罹り2週間ほど仕事が出来なかったときは、精神的にかなり厳しい思いをしました。

また、整形外科では医師の診断を受けた状態で診ることになります。

X-Pなどの画像検査、血液検査などで問診・触診だけでは判らないような処置を間違えると危ないものなどは除外されている状態で診ることになるので深く考えずに対応できてしまいます。処置が誤っていて症状が悪化しても、そう診断した医師の責任になってしまうのが現状です。

ただ、開業してからはすべて自分の責任になります。

判断を間違えたり、説明がちゃんと出来ていないと二度と来てもらえなくなることもあります。

それでも、開業して良かったと思えるほど ” やりがい ” というのを強く感じ、日々楽しみながら仕事ができています。

しっかり1人1人の患者さまと向き合い、試行錯誤を繰り返し、さらに患者さまに満足してもらうために、どんどん自分の技術・知識を高め、今まで対応できなかった症状にも成果を出せるように背伸びをし続けています。

決して楽ではありませんが、日々自分が成長できている実感があります。

これから ” 独立・開業 ” を目指す方へ

「独立する・開業する」ということはゴールではなく、1つの選択肢・通過点でしかありません。

ひと昔前は、柔整師は開業すれば儲かるという時代もあったようですが、現在柔整師を取り巻く環境はどんどん厳しくなっています。

保険の取り扱いが厳しくなったり、競合(整体師や独立した理学療法士など)が増えてきています。

サラリーマン柔整師も増えていると聞いたこともあります。

ひとそれぞれ優先順位が違うため、

  • 経済的な安定がほしい
  • いろんなことにチャレンジしたい
  • 自分のペースで働きたい

などがあり、一概に独立することがよい選択肢だとは思いません。

それでも独立・開業するということは、柔整師としても人間としても大きく成長させていくための1つの方法だと思います。

どのような道に進むとしても、先を考えずにただ仕事をこなしているだけだともったいないので、なんとなくでもいいので先を見据え、将来自分がどうなりたいか、何をしたいかを常に頭に入れておきながら仕事をしていくことが大事だと思います。

「1年前の自分と比べて何か成長できているところはあるか?」

そう自問自答をしてみてください。

もし何も思いつかないようでしたら、自分の置かれている環境や状況を一度深く考えて、思い切って変えてみるというのも選択肢としてアリだと思っております。


執筆者情報

柔道整復師
岡本 久志(おかもと ひさし) 先生

接骨院で3年勤務・整形外科で10年勤務・独立開業して8年です。
現在は「筋肉がスムーズに動く身体を作る」をテーマに施術しています。

公式ホームページ:
治療院ゆるり https://yururixurawa.net/

RSS 柔整ドットコム