※写真のモデルはイメージになります。
今回は私木下が、こちらの柔性ドットコムで、「リーダーシップ」をテーマにコラムを書かせていただきます。
早速ですが、皆さんは「リーダーシップ」と聞くと、どのようなものをイメージされますでしょうか?
「リーダーシップ」という要素は、世界中でとても重要なテーマとして研究が続けられています。
これは強い組織を作るための企業経営の世界だけではなく、宗教や教育などにおいても大切にされているスキルとなっています。
いろいろな研究者がいろいろな発表するので、「リーダーシップ・ジャングル」ともいわれるそうです。
私にどのくらいのリーダーシップがあるかは自分ではわかりませんが、ここまで経営者として最大で5つの接骨院と1つのディサービスを経営していました。
そのときのスタッフは40名を超えていました。(現在は4つの接骨院と1つの鍼灸院を経営しており、スタッフは20名ほどとなっています)
私自身、スタッフになるべく早い独立をすすめており、
・接骨院や鍼灸院を独立開業し経営(10名以上)
・社会人野球のトレーナー(現在4名)
などスタッフたちは自立し、今年は念願のプロ野球トレーナーを輩出することができました。
1人院長の接骨院には「リーダーシップ なんて不要」と考えている先生もおられるかもしれません。
でも、「リーダーシップ」は接骨院の院長にとって、とても重要なスキルだと私は考えてます。
なぜなら、患者さまへの症状説明や日常生活の指導などでとても関係するからです。
また、ご家族がいらっしゃる方であれば、その家族のリーダーとして、家族を幸福に導く責任があります。
では、それらで重要な「リーダーシップ」とは、一体どんなものでしょうか。
リーダーシップは生まれつき持っている能力ではなく、学ぶことで身につけることが出来るとされています。
神戸大学名誉教授の金井壽宏氏(※1)によれば、リーダーシップの定義としては、
リーダーの言動とフォロワー認識の間に、リーダーシップは存在する。
と定義づけされています。
また金井氏によると、振り向けばついてくるフォロワーの存在が重要とされておりますが、面白いYouTube動画がありますので併せてご紹介します。
10年前にアップされた「ムーブメントの起こし方」という題名の3分程の動画ですが、リーダーとフォロワーの関係性を面白く説明しています。
成功したリーダーには、優れたフォロワー(いわゆる「ナンバー2」)がいることは、経営の世界では有名です。
例えば、HONDA(本田技研工業)の本田宗一郎氏と藤沢武夫氏、パナソニック(松下電器産業)の松下幸之助氏と高橋荒太郎氏などがそうです。
院長である先生方に素晴らしいフォロワーがいるとすれば、リーダーとして自分なりの治療理論や説明・指導方法を考えに考え抜いて、優れた方針を決めたからです。
優れた接骨院にはその院長の施術を信頼してついてきてくださる患者さまと、院長の方針についてきてくれるスタッフというフォロワーの存在があります。
リーダーシップには2つの軸があると言われます。
1つは「仕事の指示(課題解決)」、もう1つは「思いやり(対人関係)」です。
よく聞く名言に、連合艦隊司令長官 山本五十六氏の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 ほめてやらねば人は動かじ」があります。
ヒトを育てるためには、明確な指示によって、自分たちがこれから何をするのかを理解させ、相手を思いやって成功体験を積ませて、褒めてやることが大切だと伝えています。
当時のエリートが集まる戦前の日本海軍ですら、ヒトの育て方に苦労していたことがわかる文章だと思います。
普通の人間である我々がリーダーシップに苦労するのは当然かもしれません。
この2軸という概念はとても大切で、どちらかの軸がとても優れていたとしても、もう片方の軸が不十分では、組織は成り立ちません。
例えば、患者さまへの施術がどれ程優れていても、説明態度、衛生環境、スタッフ教育などがうまくいっていなければ、その接骨院は継続できないかもしれません。
柔道整復療養費は10年に渡って減少を続け、その間も接骨院は増え続けています。
業績ばかりを追い続けて2軸あるリーダーシップのうちの課題解決ばかりにフォーカスすると、もう一方の人間関係がガタガタになってしまい、スタッフの退職が増えることになるかもしれません。
また、リーダーが描くビジョンやミッションが崇高であれば、周りの人間は、院長のフォロワーとして自立した行動をしてくれるようになります。
突然ですが、この記事をご覧になられている院長の先生方は、ご自分の接骨院に「経営理念」を作っておられるでしょうか。
私は作っています。
「患者さまの心と体の健康を追求すると同時に、スタッフ・地域社会・人類の真の幸福に貢献する」というものですが、このような理念をスタッフと共有しておくことは、自分との約束にもなるのでいいかもしれません。
ヒトはどのようなリーダーについていきたいかという研究があります。
一言でいうと「信頼できる人間」だそうです。
そしてどんなリーダーが信頼できるのかという項目としては、リーダーの倫理観やフォロワーが自らの意思でリーダーをフォローできているかどうか、最後に楽天的であるかどうかにあるようです。
新田次郎氏原作の八甲田山では、雪の中で遭難した部隊のリーダーが「天は我々を見放した。一緒に死のう。」と言った瞬間に望みを失った隊員たちがバタバタと死んでいく様子が書かれています。
ここまで長々とリーダーシップ論を書いてきましたが、実はクロネコヤマト創業者の小倉昌男氏(※2)が、経営リーダーの10の条件として、これらの全てを書いておられます。
詳しくはこの名著を読んでいただきたいのですが、優れた接骨院のリーダーはここに書かれていることを様々な方面から学び、すでに対策を立てておられるように思います。
《参考文献》
※1 金井壽宏『リーダーシップ入門』日経BP日本経済新聞出版本部 2005年
※2 小倉昌男『小倉昌男 経営学』日経BP社 1999年
柔道整復師・専科教員・鍼灸師・介護支援専門員・寿晃整骨院総院長
木下 広志 先生
【経歴】
整骨院3年、整形外科4年研修後、平成4年開業、朝日医療大学校にて非常勤講師を12年間勤める。50歳で岡山大学経済学部に入学、岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科で伝統医療と近代医療の関係性を研究、令和4年度博士前期課程修了する。
公式ホームページ:
寿晃整骨院 https://www.jukou3.com/