【自由に診療して自由に施術する】自費診療のすゝめ

今回のコラムでは、「自費診療」をテーマにしたいと思います。

すでに自分のお店をお持ちの方、経営されている方も、ぜひお役立ていただければ幸いです。

私が「自費診療」を選んだきっかけ

私の院では自費診療で施術を行っています。

20分10,000円、腰痛や肩こりなどは約40分20,000円、全身治療は約60分30,000円、ここに頭部や顔面の施術を加えると90分40,000円…といったようなメニューです。

1日に施術が出来る患者さま数は4~5名で、本来なら従業員を教育して施術を従業員に任せればもっと稼げますが、金額に見合う技術を教育するまでに時間が掛かるため、私1人で行っています。

比較的高めの施術料金ではありますが、40年ほど前は接骨院を開業し、受領委任払いで保険を取り扱っていました。

運も良かったのでしょう、開業1年目で1日来院数は平均100名を超え、慌しく施術していたのを覚えています。

誰しもが 患者さまが増えれば収益も増える → 当然もっと患者数を増やそう → 分院を持とう という考えになると思います。

今だからお伝え出来ますが、一時期は分院と合わせて6件の接骨院を開業しており、その目的は正直お金でした。

しかしながら、収益計算と同時に頭の片隅では「治療とは何か、治るとは何か、なぜ再発するのか」という疑問が絶えず頭の片隅にありました。

その当時は保険診療とこれらの疑問が同時進行で解決されるものと考えていました。

そもそもですが、私たち治療家の役目は、苦しんでいる患者さまを救い、ニコニコした笑顔を見ることに生きがいを感じているのではないでしょうか。

この思いが根底にあれば、本当に治すことのできる技術を習得しなくてはなりません。

そのためには、勉強をして病態を理解し、その原因となるものを追求することが大切になります。

私は保険診療を行いながら、時間内でできる一定の手技の中で原因箇所を見つけようと努力しましたが、何度繰り返しても原因箇所にたどり着くことなく時は過ぎました。

そして最終的に、

  • 時間を掛けて1人の患者さまの原因を追究する以外方法はない
  • 短時間での施術、患者の病態をカテゴリー化し、それに対応した一定の手技では原因を追究することはできない

という結論に至りました。

この結論に至るまでに大きな労量と長い時間を費やしました。

その後の経緯に関してはまた別の機会にでもお伝えしたいと思います。

「自由診療」のメリットとデメリット

ここであくまで私の意見ですが、自費診療のメリットとデメリットを記載します。

メリット 

  1. 原因追及に時間をかけることができる
  2. 患者さまの生体反応を正確に読み取ることができる
  3. 病態に対して必要な適刺激をおこなうことができる
  4. 患者さまからの要求が明確になることで技術向上につながる
  5. 医学的根拠を学び理論的な施術をすることで患者さまからの信頼を得ることができ、トラブルが減少する。
  6. 保険取り扱い業務の煩わしさがなくなり、1日の現金収益が明確になる。

デメリット

  1. 自費診療では金銭的に来院することができない患者さまが存在する

私はメリットの4つ目「患者さまからの要求が明確になることで技術向上につながる」が特に大切だと思っており、今回はこれについてお話ししたいと思います。

保険診療では施術者も患者さまも、施術方法や施術結果に対して適当なところで妥協しがちです。

例えば、患者さまは「また来週、通院すれば良いか」、施術者は「また来週診れば良いか」などと妥協してしまうところです。

しかし自費診療ではこのようにはいきません。

自費を払うからには患者さまの要求は明確になり期待を持たれます。

施術者も期待以上の結果を出そうと気構えます。

これが技術向上に繋がると私は考えてます。

患者さまは施術に医学的な根拠を求めるようになりますし、施術者も理論的なアドバイスを行うようになるのです。

当然、より良い技術を習得しなければなりません。

それも根拠に基づいた技術を習得しなければなりません。

「理由はよく分からないが、このようにすれば治る、楽になる」といった安易な考えでの手技操作ではいけないのです。

デメリットに関しては確かに自費であれば通院が難しい患者さまも来院されるでしょう。

これに関しては仕方ないかもしれませんが、これは患者さま自身が決めることです。

「自由診療」を始めたいと思っていらっしゃる方へ

では、自費診療に切り替えていく方法を私の経験からお話しします。

これから開業される先生方は迷われることなく自費診療からスタートすればよいと思います。

問題なのは料金です。

どの程度時間を掛けて、いくらぐらいに設定するか、これに関しては先生方の技量とご相談ください。

私は周辺で開業されている他自費治療院にて、技量の偵察は行いますが、料金を比較検討する必要はないと考えています。

保険診療からスタートを考えらえている場合ですが、自費診療のできるお時間を当初より取り入れてはいかがでしょうか。

週1~2日程度、保険ではなく自費診療を行うのです。

患者さまの保険、自費の通院状況をみながら徐々に自費診療に移行していくというスタイルで良いと思います。

現在すでに保険診療をされていて、自費診療に切り替えたいとお考えの場合も同様です。

自費診療だけを行う日を、週に1日あるいは半日でも設けていくことから始められてはいかがでしょうか。

この場合の料金の決め方ですが、自費診療にかける時間内で、何人の保険診療の患者さまを診ることができるかで決めるのも一つの方法です。

私の場合も、当初はこのスタイルで始めました。

例えは1時間で保険診療の患者さまを診ることのできる人数が12名とします。

当時と現在とでは、お1人さま当たりの単価が異なりますが、当時は1,000円程度でした。

したがって1時間の治療で12,000円となります。

このようにすると患者さまから「なぜ12,000円もするの」と問われてもその理由を当然のごとく説明することができると思います。

まとめ

これから医療の仕組みも保険の取り扱いに関して、益々厳しくなってまいります。

私は自費診療を先生方に強く勧めているわけではありません。

ただ「もっと自由に診療したい」「もっと自由に施術したい」とお考えがあるのであれば、自費診療をご検討いただいた方が良いかもしれません。

あくまで私の経験からのお話しですが、参考になれば幸いです。


執筆者情報

柔道整復師・アスレチックトレーナー・柔道整復師専科教員
中辻 正 先生

【経歴】
岐阜・東京 リニューイングセラピー 筋活性化研究会 会長
岐阜大学医学部解剖学分野特別協力研究員
perfume専属主任トレーナー

1958年生まれ。柔道整復師として活躍し、「Renewing Therapy(リニューイングセラピー)」を東京・岐阜にて開院、女優/モデルなど著名人が多数通院、その効果が話題に。老化した筋肉の改善をテーマとし、顔を含む全身の老化防止と痩身、筋治療に大きな効果を上げている。現在は筋活性化研究会を開設し筋治療の普及に邁進している。

筋活性化研究会 公式ホームページ
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