医師が保険診療の同意書を書いてくれないワケ

接骨院では脱臼や骨折(急性期を除く)、その他の怪我に対し、保険診療ができます。

しかし、その際に医師の同意が必要な場合があります。

「医師の同意」を得ようとしても同意書を書いてくれる医師は少ないです。

なぜ医師は同意書を書いてくれないのか。

今回は医師からの目線でその理由を解説させていただきます。

医師は接骨院で何をしているのかを知りません

柔道整復師という職業や接骨院という治療院があることは多くの医師が知っています。

しかし、残念なことに柔道整復師が接骨院でどのようなことをしているかを知っている医師は少ないです。

捻挫や打撲といった軽傷の外傷に対し、接骨院で物理療法(整形外科でも行っていること)ができることを知らないだけでなく、接骨院をマッサージ屋(整体)と同じような場所、と考えている医師もいます。

何をしているかよくわからないところに治療を頼むことは普通ありえません。

同意書を書いてもらうために、まずは接骨院がどのような場所で、どういった治療をしているか、を近隣の病院に理解してもらうようにしましょう。

なお、柔道整復師がスタッフとして働いている整形外科クリニックは接骨院への理解度が高いので、同意書を書いてくれる率が高いかもしれません。

近くにそういった病院がないか一度調べておきましょう。

医師は「あなた」を知りません

同意書を書いてもらえないケースで多く見られるのは、「病院でこの紙を書いてもらったら保険が使えるようになるよ」などと言って患者に同意書の書類を持たせて病院を受診させるケースです。

正直、このケースでの医師は

「何、この書類?この柔整師、誰?」

と反応することがほとんどです。

まったく知らない人に「俺は好き勝手するけど何かあったら責任をとってね」と言われて、了承する人はいないでしょう。

正直、このケースで同意書を書く医師はかなりヤバい人の可能性が高いので、同意書を書いてくれるとしても関わらない方がいいです。

普通の医師に同意書を書いてもらうために、まずは自分という柔道整復師がいることを知ってもらいましょう。

多少なりとも知っている人からの依頼であれば同意書を書いてくれる確率は高くなると思います。

何もスーツを着て挨拶に行きなさいという意味ではありません。

この後でお話しするので詳しくは次の項目をみてください。

Give and Takeの関係を築いていますか?

世の中はGive and Takeの関係で成り立っています。これは医療業界でも同様です。

あなたは治療を行うのに「無料でしろ」と言われて治療しますか?しませんよね。

同様に医師も「同意書を書いて」と言われるだけだと同意書は書きません。

同意書という利益を得ようとするなら何かしらを医師にも提供する必要があります。

もちろん、金銭を渡しましょうという訳ではありません。金銭を渡すのは完全にNGです。

では何をするのか。

答えは「患者を紹介する」です。

同意書が欲しいときだけでなく、普段から患者を紹介しておきましょう。

そして紹介状を通して「あなた」という柔道整復師を知ってもらいましょう。

適宜、患者を紹介してくれると医師は「この柔道整復師は真っ当な医療人」と判断します。

テレビやネットでセラピスト(治療家)が西洋医学を無視して話していることがあり、多くの医師が整体師だけでなく、柔道整復師にも不信感を持っていることは事実です。

そのため、自分の治療を固辞するのではなく、病院を受診することも勧められる柔道整復師は医師から信頼されます。

紹介する場合もきちんと病歴や理学所見などを書いて紹介すると信頼度が増すので、きちんとした紹介状を書く癖もつけておきましょう。

まとめ

今回は医師が同意書を書いてくれない理由について医師側目線で解説しました。

  • 接骨院がどういう場所か知ってもらう
  • 「あなた」という柔道整復師を知ってもらう
  • 普段から患者を紹介する

欲しいと思った時にすぐに同意書を書いてもらうためにも上記を意識しておきましょう。


執筆者情報

整形外科専門医・脊椎脊髄病医・難病指定医
ゆるドク 先生

医学博士
医療ライター・ディレクター
仕事の依頼はホームページからお願いします。

ホームページ:
ゆるく生きたい整形外科医 ゆるドクのブログ
https://manmori-orthopedics.com/

RSS 柔整ドットコム