鍼灸師と柔道整復師の細かな違いとは?

※写真のモデルはイメージになります。

はじめに、このコラムは

  • 現在、医療従事者を目指している専門学校の学生さん
  • 現状、国家資格を持ち、臨床に携わっている先生
  • 将来、国家資格を取得したいと志しているまたは検討されている学生さんや社会人の方

に向けてタイトルの内容に沿った内容をお伝えできたらと思います。

ルールで知る柔整師、鍼灸師の違い

柔道整復師、鍼灸師とは?

先ずは、柔道整復師、鍼灸師についてご紹介できたらと思います。

法律に以下のような記載があります。

~柔道整復師法第2条~
柔道整復師とは厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者

~あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関する法律第1条~
医師以外の者であん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうを業とする場合は免許を必要とする。

ここでわかる違いは、

柔道整復師
 = 
柔道整復を業とする者

はり師、きゅう師(両方をまとめると鍼灸師)
 = 
医師の代わりにはり、きゅうを業として行なう者

となります。

業とするとは?
「その行為を反覆、継続して行うということ」という意味になります。

では次に【柔道整復】【はり、きゅう】とは何なのかをお伝えしていきます。

【柔道整復】とは?

柔道整復の方法としては以下の3項目があります。

 整復法
 = 骨折及び脱臼などした骨や関節をもとの位置に戻すこと

 固定法
 = 骨折及び脱臼した箇所を整復後、固定用の器具を用いて安定させ、回復を促すこと

 後療法
 = 手技療法(マッサージなど)や物理療法(温熱や電気など)運動療法(リハビリなど)により患部の回復を促すこと

これら3つの医療行為を行い、自然回復力を高めることが柔道整復と考えます。

なお、その他にも体のトラブルや不調に対する治療はありますが、これは後述する保険診療の取り扱いで詳しくお伝えさせて頂きます。

【はり、きゅう】とは?

次に、はり、きゅうについて解説します。

「鍼(はり)」とは

太さ・長さが様々な針を目的によって体に刺したり、針以外のもので体を擦ったりして体に刺激を入れ、体のコリをほぐしたり、自然回復力を高めたりして体の不調をとることです。

「灸(きゅう)」とは

モグサを乾燥させたものを加工し、大きさやモグサの質などを変え体の表面などで燃やし、温熱刺激を加えて行き、自然回復力を高める治療方法です。

これに関しても保険を使った行為とする場合、範囲に制限があるので柔道整復の保険適応に合わせてご紹介させて頂けたらと思います。

保険診療の取り扱い

では、柔道整復、はりときゅうに関して保険適用=保険証を使っての治療できる範囲についてご紹介していきます

柔道整復で保険が使える範囲

  • 骨折、脱臼の整復(応急処置に限る)
  • 急性または亜急性の外傷性の負傷(捻挫、打撲、挫傷)

上記に加えて、骨折脱臼の治療も医師の同意があれば可能となります。
なのでイメージとして、柔道整復 = 急性症状に対応すると考えて頂ければと思います。

はり、きゅうで保険が使える範囲

  • 神経痛 
  • リウマチ 
  • 腰痛症 
  • 50肩(肩関節周囲炎)
  • 頚肩腕症候群 
  • 頚椎捻挫後遺症
  • その他類似疾患

の上記になります。

しかし、さらに柔道整復とは大きな違いがあります。

それは「医師の同意が必要である」という点です。

柔道整復師に関しては同意なく保険適用できる範囲があります 。
しかし、鍼灸師は必ず同意が必要であり、それ以外の施術は自費診療となります。

イメージとしては下記になります。

 柔道整復の保険適用 = 急性期の症状

 はり師きゅう師 = 慢性期の症状

幅広く患者様のニーズに応えていくには2つの資格保有者がうまく協力するとよいですね!

開業に関して

柔道整復師の開業条件

更に業として行う上で大切な働き方、こと開業に関して大きな違いがあります。

 柔道整復師 = 接骨院の開業が可能

になり、その際必要な要件として

  • 施術管理者研修を修了すること
  • 2022年4月〜2024年3月までに開業予定
     → 2年間の実務経験+2日間の施術管理者研修
  • 2024年4月以降の開業予定
     → 3年間の実務経験+2日間の施術管理者研修

これを満たして初めて開業ができます。

鍼灸師の開業条件

 鍼灸師 = 鍼灸院の開業が可能

保険適用をするためには柔道整復師同様に施術管理者として登録する必要があります。

※保険診療を行わない = 自費診療のみで開業されるのであれば施術管理者は不要となります。
 施術管理者になるためには1年間の勤務経験(施術所にて)+2日間の管理者研修が必要です。

ただ、柔道整復師と開業に関して大きな違いが一つあります。

鍼灸師は「出張(往診)のみでの開業が可能」です。

店舗があることが開業の要件である整骨院、店舗がなくても開業ができる鍼灸院、これも大きな違いだと思います。

広がる柔道整復師と鍼灸師の他分野との関わり方の違い

ここからは違いとしては働き方の多様化に関してになります。
柔道整復師なら整骨院、鍼灸師なら鍼灸院と考えがちになります。
しかし、それぞれ他の働き方もあります。

接骨院以外の柔道整復師の働き方

  • 整形外科勤務
  • 整体、マッサージ院勤務または開業
  • 介護福祉施設(機能訓練指導員)
  • スポーツトレーナー

などが挙げられます。

特にスポーツトレーナーなどは自分がしていたスポーツで学んできた知識や経験、機会を生かす代表的な働き方かもしれません。

鍼灸院以外の鍼灸師の働き方

柔道整復師と重複するものがありますが加えて、

  • 美容鍼灸などのエステサロン
  • ペインクリニック(ターミナルケアといった疼痛緩和など)

どちらの資格も健康志向の増進から求められる職種になってきているかと思います。

数字で見る柔道整復師と鍼灸師の違い

柔道整復師、鍼灸師の人数と推移

令和2年度平成30年度平成28年度
柔道整復師75,786人73,107人68,120人
はり師126,798人121,757人116,007人
きゅう師124,956人119,796人114,048人

※参照元 https://www.hone-u.com/industry-info/statistics/detjb1zb.php

令和2年から平成28年にかけての統計になりますが、多少の増減はあれど3000人〜5000人ほど増えていっているようです。

柔整師柔道整復師、鍼灸師の国家試験合格率と合格者数

令和3年度令和2年度令和1年度
柔道整復師合格者2,740人(62.9%)合格者3,011人(66.0%)合格者3,041人(64.5%)
はり師合格者2,956人(74.2%)合格者2,698人(70%)合格者3,263人(73.6%)
きゅう師合格者2,963人(76.1%)合格者2,740人(74.3%)合格者3,201人(74.3%)

※参照元 https://www.hone-u.com/industry-info/statistics/detjb1zb.php

過去3年間を比較すると柔道整復師は65%前後の合格率で、はり師、きゅう師は72%前後の合格率と数字で見ると柔道整復師の方が難しい印象です。

整骨院、鍼灸院の数

次に働く場所としての整骨院、鍼灸院の数はどうなっているのでしょう?

令和2年度平成30年度平成28年度
柔道整復を行う施術所50,364軒50,077軒48,024軒
はり及びきゅうを行う施術所32,103軒30,450軒28,299軒

※参照元 https://www.hone-u.com/industry-info/statistics/detjb1zb.php

過去6年間を比較すると多少の振れ幅があるが2年間隔でどちらも500から2.000軒の店舗が増加しています。
柔道整復師、鍼灸氏共に増加する有資格者に対して店舗の増加がそこまで伴っていない印象です。

すぐに開業ではなく、就職している方や資格を活かし整骨院や鍼灸院以外の場所で活躍される方たちがいるのかもしれません。

まとめ

今回は柔道整復師と鍼灸師の違いをまとめました。

前述しましたが、主には下記のイメージです。

 柔道整復師
 = 急性期の症状に対する治療

 鍼灸師
 = 慢性期の症状に対しての治療

現場で働くと上記に加えて患者様への治療を行う際の考え方のベースになるものが異なっている印象です。

柔道整復師=西洋医学的な視点(痛み不調を起こしている箇所の改善)
鍼灸師=東洋医学的な視点(痛み不調を起こしている体のバランスを整え、自身の良くなる力を高める)

これらの視点に重きを起き患者様の状態把握、治療方針や治療手段を検討していきます。

ニーズが多様化している今、このようにお互いが違う個性を持った柔道整復師と鍼灸師がそれぞれの特性を活かし協力し、患者様のニーズに応えることが求められるのだと思います。

長くなりましたがこれが少しでも多くの方にとって参考になりましたら幸いです。


執筆者情報

こころ医療福祉専門学校 スポーツ鍼灸科 3年生
久保 直人

こころ医療福祉専門学校整体療法科卒業
長崎県五島列島にある【佐々木整骨院】に6年勤務、自費診療、スポーツトレーナー業務を主に関わる
現在上記専門学校スポーツ鍼灸科に再入学現在3年生

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