現役の柔道整復師が語る 開業してからの失敗談

※写真のモデルはイメージになります。

私はこれまでに接骨院を3度開業し、2度閉院させています。

今回は、そんな筆者が考える、接骨院の独立開業を失敗する特徴3選について記事にします。

接骨院などの開業を考えている方の参考になれば幸いです。

開業を失敗する特徴その1:身の丈に合わない設備投資

接骨院を閉院してしまう特徴の1つ目は、開業当初から自分の身の丈に合わない設備投資をしてしまうというケースです。

設備投資とは、接骨院の運営に必要な機械類、備品などを準備することであり、それらを調達するために必要な資金のことを表します。

実は設備投資のさじ加減はものすごく重要です。

例えば、独立する前に勤めていた院がスタッフ10名を雇用していて、40坪の広さにベッド15台、それに比例して機械類がたくさん設備されている院だったとします。

独立開業する際に、前職のイメージのまま広めの物件を探して、機械をどんどん購入してしまうと、不要なスペースの家賃が毎月かかり、不要な機械のリース料が毎月重くのしかかってくることになります。

一人で開業した場合、どうやっても最初から患者さんの予約が満員になることはありません。まずは

  • 12~15坪程度の安価な物件
  • 初期はほんとに必要な機械のみを導入する

というスモールスタートを切ることが接骨院開業を失敗させないための大事な考え方であると思っています。

開業を失敗する特徴その2:十分な運転資金を準備しない

次に挙げられる接骨院の開業を失敗する特徴は、開業時に資金を十分に準備していないことです。

日本人は「借金」に対してネガティブな感情を抱く人が多く、借金をするとしてもなるべく少なくしようします。

開業時に銀行からの借り入れして資金を調達する場合に借り入れ額は可能なだけ少なくする方がいます。

これは大いに間違いです。正解は「お金は借りられるだけ借りておく」です。

なぜ、お金は借りられるだけ借りたほうがいいのか?大きく2つの理由があります。

1つ目は、運転資金が十分にあることで、精神的なストレスを軽減させることができるためです。

独立して1か月目なんて、前職から顧客を連れて来れる場合や、生まれ育った地元での開業でものすごく周囲からの支援が大きい場合を除いて、患者さんは思ったように集まりません。当然、開業前には事業計画を立てるのですが、計画通りになんていきません。

予想に全然満たない患者数と売上に対して、残酷にも毎月の経費は掛かり続けます。
当初借りたお金さえもどんどん減っていきます。

このような状況の際、
売上が立たないとあと3か月でお金がなくなってしまう状態
なのか
売上がなくともあと8か月は運営ができる状態か
のどちらに当てはまるのかを冷静に考えます。

当然、後者のほうが精神衛生上焦りは少なく、さまざまな集客方法にトライできる期間と心の余裕ができます。

独立開業となると、これまで経験してこなかった経営に関わる作業もたくさんすることになり、それだけでかなりのストレスになります。お金の問題だけはストレスにならないように、潤沢な運転資金を手元にもっておくことをおススメします。

お金を借りておいた方が2つ目の理由は、仮に運営がうまくいかない時に銀行は追加でお金を貸してくれないからです。

心機一転独立開業した接骨院も、前述したように計画通りにいくことはほとんどありません。
たいていは計画より下回ります。

予想と反して売上が立たず、2か月先の運営資金が残っていない状況になった場合、銀行に追加融資をお願いにいくことになります。

ただ、銀行側からすると、うまくいっていないお店に対してお金を貸すことはためらいます。貸しても返済してもらえない可能性があると判断され追加でお金を貸してもらえないことがあります。

接骨院の運営がうまくいかず、どうしようかと藁をもすがる想いで頼った銀行からも融資を断られ、心身ともに疲れてしまって閉院に追い込まれる。
そんな負の連鎖に巻き込まれるリスクを少なくするためにも、開業当初にしっかりと資金を準備しておきましょう。

開業を失敗する特徴その3:「独立開業」を目的にしてしまう

接骨院の開業を失敗してしまう3つ目の理由は、「治療家として独立開業すること」自体を目的にしてしまう場合です。

独立を目的にすることの何がダメなの?と想うかもしれませんが、筆者は1回目の開業の際にこの理由がために院を早々に閉じる判断をすることになりました。
そのため、説得力を持ってその理由をお伝えすることができます。

私は26歳の年に1度目の開業をしました。
独立までは九州で修行を積んで、柔道整復師としてある程度の技術と経験を身に付けることができたと考えたタイミングで地元広島市に戻り、開業に至りました。

この時の私の目的は、「とりあえず独立する」だったため、文字通り独立開業することが目的になっていたケースです。

開業を決意してから実際にオープンするまでのスピードが異常に早かったことを覚えています。

地元の隣町での開業だったため、周囲の方の力も借りることができ、開業4か月目には単月黒字を出すことができ、そこそこのスタートが切れていました。

ただ、6か月目、9か月目と運営していく中で、「なんのために接骨院やってんだろう」と自身の目的に対する明確な方向性が見つからないまま、漠然とした不安だけが大きくなっていく日々を過ごすことになりました。

当初の目的が「とりあえず独立する」だったため、目的を達成してしまいそれ以上の意義を見出せなくなっていました。

その後は厚意にしていただいたドクターとの出会いもあり、開院13か月で閉院の選択をし、整形外科医院の開業に携わるなど、たくさんの経験をさせていただくこととなりました。

今考えたら、開業という手段を目的化していたと分析できます。

開業当初に目的をきちんと定めて挑めば、気持ちがブレることなく確かな自信と誇りを持って接骨院の運営を行えます。

「地域の方の健康をまっすぐにサポートするために、私はこの地で開業する」

「自分と自分の周りの人を幸せにするために、事業を成功させて社会貢献する」

など、これから独立開業を考える方は、
独立開業は自身の目的を達成するための手段の1つ
という認識をしましょう。

手段であって、真の目的ではない。手段を目的化してしまうと、自身を見失うことになりかねません。

まとめ

今回は接骨院を開業し、その後失敗してしまう特徴を3つ挙げました。

せっかく開業という道を選ぶのであれば失敗しないように今回の話を頭の片隅に置いていていただけると良いかと思います。

この記事を読んだ皆さんが目的に向かって成功することを願っています。


執筆者情報

柔道整復師
元原 誠吾 先生

整形外科 副院長経験ありの柔道整復師
◆膝中心に年間1000例の手術に帯同
◆1回/週 ストーリーズ 病態鑑別クイズ
◆考え方や質問に対してのLIVEのみ発信
◆セラピスト診断学研究所 第一期運営メンバー
▼セラ研の入会はこちらから

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