柔道整復師として働くと、いつかは自分で開業したいと考えるのは自然です。
しかし、開業するとなると「今の技術で大丈夫か?」「今の貯金で大丈夫か?」「経営の知識が無いけど大丈夫か?」など不安を感じ、開業に踏み出せないという方が多くいます。
筆者はこれまで3度接骨院を開業しており、初めて独立・開業したのは26才の時でした。その前に医療現場で働き、臨床経験を積んだ期間は3年間でした。しかも、その3年間修業期間のうち、約2年9か月は整形外科で勤めていたので、整骨院での研修期間は3.4か月といったところです。
そんな状況でも開業した筆者の考え方と開業した後の経験を基に、開業に最低限必要な条件を3つ説明させていただきます。
- 接骨院開業に必要な技量は半年で大丈夫
- 開業時の最低用意すべき自己資金は50万円
- 経営・経理の勉強は接骨院を開業してからでOK
接骨院開業に必要な技量は半年で大丈夫
今回の記事は柔道整復師としての「技量のみ」の説明です。
柔道整復師として接骨院を開業するには、令和4年現在、
・2年以上の実務経験
・管理柔整師研修を修了している
という条件が必要です。
柔道整復師となって半年で開業できるという意味ではありません。
「技術がないと患者さんは来てくれない」
「知識がないと人気な接骨院にならない」
といった不安により接骨院開業に二の足を踏んでいる方もおられるでしょう。
実際に、柔道整復師として開業するまでに必要な技術量ってどのくらいなのか。
残念ながら技術量は数値で測れるものでないのですが、私が考える開業における最低限の技術量は
「一般的な接骨院で半年間練習した技術」だと考えています。
なぜ半年で大丈夫と言えるのかを説明します。
通常、接骨院で働いていると、毎日患者さんを触っているかと思います。そして、その患者さんの多くは定期的に先生の施術を受けに来てくれているはずです。
もし、先生に技量がない(開業に必要な最低限の技術が備わっていない)のであれば、今勤めている治療院でも患者さんが付かず、患者さんに触れる機会もないはずです。
つまり、開業で悩むほどの経験がある先生の多くは開業するために必要な最低限の技量を既に備えているのです。
自身が開業したときに、いま担当しているような患者さんを集客することができれば、開業した院は問題なく売り上げが立つことになります。
技術や知識を理由に開業をためらっている先生がいたら、それは考えすぎかもしれません。自分の受け持ち患者がいる時点で技量は十分にあると自信を持ちましょう。
開業時の最低用意すべき自己資金は50万円
開業する条件の一つに、当然ながらお金の問題も出てきます。
いろいろな開業の仕方がありますが、機械代、家賃、運転資金など含め、最低でも500万円~700万円ほど必要と考えておきましょう。
もし、完全に自己資金(貯金)だけで開業しようとすると、500万円を貯める必要がありますが、500万円を貯めるとなると時間がかかります。
月に5万円ずつ開業資金を貯金したとしても、500万円÷5万円=100か月(約8年間)かかります。
では、開業するために本当に500万円貯金がないとできないのか?
そんなことはなく、銀行や国金と呼ばれる政府の金融機関から融資を受けて開業することができます。
ただ、銀行や国金からお金を借りるにも条件があり、「借りるお金の総額の1割程度の自己資金は自分で準備してください」といわれることがほとんどです。
つまり、500万円の1割の50万円ほどの貯金があれば、足りない450万円は銀行から借りてすぐに開業ができることになります。
貯金がないからということを理由に開業を悩んでいる先生がいたら、まず50万円貯めることを始めましょう。
経営・経理の勉強は接骨院を開業してからでもOK
接骨院を独立開業するということは、一国一城の主になることであり、イチ経営者になることです。
経営者に必要な素質は?と聞かれると、
・損益計算書を見ることができる
・貸借対照表を見ることができる
・経理ができる
など、難しいことを考える方が多くいます
しかし、一人で始める接骨院であればそんなに難しいことを知る必要はありません。
・患者さんに接骨院に来てもらう
・施術で患者さんに満足してもらう
・施術の対価としてお金をきちんといただく
これができれば十分です。
「経費の管理がわからない、確定申告がよく分からない」
このようなことを言う方がおられますが、わからないことはわかっている人に聞けばいいんです。
お金はかかりますが、経理関係を専門にした税理士にお願いすれば問題ありません。もし、お金をかけたくない場合は近所の商工会や税務署に相談にいきましょう。タダでいろいろ教えてくれます。
経営者としての知識がないから開業を足踏みしている先生がいたとしたら、それはもったいないです。
まず、経営者の勉強としていくら本を読んでも最初から優秀な経営者になるわけではありません。経験しないと何事もうまくはなりません。
経営者にならないと経営を経験することはできません。いま、社会で活躍している経営者の方々も、もともとは経営者じゃなかった人たちです。
それでも志を持って事業を起こし、起業していろんな人に助けてもらいながら、たくさんの大変な思いをしながら、だんだんとカッコいい経営者になっていった方たちです。
経営たるものを知らないのは当たり前です。まずは勇気をもって「新米経営者」になってから、だんだんと経営力を身に付けていくことが最短ルートです。
まとめ
以上の開業するために最低限必要な3つの条件をまとめると、
ということになります。
この3つの条件を見ると、開業に悩んでいるほとんどすべての方がその条件をクリアしていることでしょう。
ただ、これらのことがわかっていても独立開業に一歩踏み出せない人の気持ちもよくわかります。
そういった方が独立に踏み切れない一番ネックとなっている理由は、「漠然とした不安」であることがほとんどです。
「漠然とした不安」を抱えて開業に躊躇っている人は、すでに開業している先輩方に話を聞いてみて下さい。先輩たちも最初は同様の不安を抱えていたのです。
きっと、開業時の不安や心境、そしてどのようにそれを解消したのかを指南してくれるでしょう。
不安を解消し、「一歩踏み出す勇気」を手に入れましょう。
先生方の挑戦を応援しています。
柔道整復師
元原 誠吾 先生
整形外科 副院長経験ありの柔道整復師
◆膝中心に年間1000例の手術に帯同
◆1回/週 ストーリーズ 病態鑑別クイズ
◆考え方や質問に対してのLIVEのみ発信
◆セラピスト診断学研究所 第一期運営メンバー
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